瀬尾まいこ『卵の緒』高校生の頃大好きだった本

瀬尾まいこさんの『卵の緒』

家族、学校、友達、身近なテーマを描いた、平凡だけど魅力たっぷり。大好きなこの本を紹介します。

読みながら心がじわ~と温かくなり、分厚過ぎないこの本にぬくもりすら感じてきます。

※一部ネタバレを含みます。

『卵の緒』のあらすじ

表紙をめくると、こんな語りから始まります。

僕は捨て子だ。子どもはみんなそういうことを言いたがるものらしいけど、僕の場合は本当にそうだから深刻なのだ。

小学四年生の育生は真面目で優しい男の子。

お母さんと2人暮らしの育生は「自分は捨て子」だと、周りの反応や自分と似てないお母さんからそれに気づいています。

ニワトリ親子
ニワトリ親子

なかなかインパクトのある出だしですが、
育生とお母さんはとっても仲良し。愛の物語です。


卵の緒

ある日育生は学校でへその緒について知り、お母さんに「へその緒見せて」とお願いをします。

これでお母さんの子かどうかはっきりする、とドキドキする育生でしたが、、

しかしお母さんが見せたのはへその緒ではなく、卵の殻でした。

お母さんは卵で産んだとだと言います。


ハンバーグ

育生が5年生になり、仲良し親子の間で2つの話題が増えていきます。


一つ目はお母さんの好きな人の朝ちゃん。

職場の同僚の朝ちゃんが気になり出したお母さんに散々恋バナを聞かされる育生です。

美味しいハンバーグが焼けたある日お母さんがこんなことを言います。

「すごーくおいしいものを食べた時に、人間は二つのことが頭に浮かぶようにできているの。

一つは、ああ、なんておいしいの。生きててよかった。
もう一つは、ああ、なんておいしいの。あの人にも食べさせたい。

で、ここで食べさせたいと思うあの人こそ、今自分が一番好きな人なのよ」

そして自分が焼いたハンバーグを朝ちゃんにも食べてほしいと、突然お母さんは朝ちゃんを家に呼びます。

お母さんは時々育生がびっくりするくらい行動的になり、お家を賑やかにしていきます。

その後もお母さんは料理が美味しく出来た日に朝ちゃんを招き、2人暮らしの日常が少しずつ変わっていきます。


にんじんブレッド


2つ目の話題は育生のクラスメイト池内くん。


クラスのムードメーカーの池内君が突然学校に来なくなりました。

特別仲が良かったわけではありませんでしたが、育生は池内君のことが気になりだします。

直接会いに行き「早く学校においで」と声をかける育生でしたが、育生にはクラスの人気者なのに学校に来ない理由が理解出来ず、何度かお家に遊びに行っても池内君は学校にやっぱり来ないまま時間が流れます。



そんなある朝、お母さんのが焼いた美味しいにんじんブレッドを食べた時、育生は池内くんに食べさせたいと閃きます。

にんじんがどうしても嫌いな池内くんを驚かせたいという育生の思いを聞き、お母さんは池内君をお家に招待します。


何でもないはずの日でしたが、今日は「好きな人と好きなものを食べる日」にしようとのお母さんの発案により、池内君と朝ちゃんも4人でずる休みをします。

またしてもお母さんの行動力に驚く育生でしたがお母さんに説得されて特別な日が始まります。

せっかく好きになった人をほっておくのはもったいないでしょ。


『卵の緒』 見どころ

あらすじからわかるように、この話には劇的な展開や事件や奇跡は起こりません。

あるのは代わり映えのない日常だけです。

しかしそんな日常に登場するいとおしい人物たちと、彼らの心が一番の見どころです。

お母さんの深くてまっすぐな愛情


育生のお母さんはガサツだったり、テキトーな部分もありますが、とにかく一貫して育生への深い愛情を当たり前のように言葉にするところが最高に素敵です。


育生が親子の証を求めてへその緒を見せてとお願いする場面では、お母さんはへその緒は見せませんが、育生が大好きだという思いをしっかり口にして抱きしめてくれます。

「母さんは、誰よりも育生が好き。それはそれはすごい勢いで、あなたを愛してるの。

今までもこれからもずっと変わらずによ。ねえ。他に何がいる? それで十分でしょ?」

ニワトリ親子
ニワトリ親子

これが証だよって素直に言えるお母さん素敵!



また、お母さんの彼氏になる朝ちゃんが家に来ることが増え、家族になっていく場面では

お母さんの彼氏にヤキモチを焼いたり、受け入れられなかったりしそうなものですが、ここでもお母さんの愛情が育生を包んでしまいます。

彼氏の朝ちゃんと息子の育生がお喋りしているところを見かけたお母さんはこんな言葉を掛けます。

「おお、やっぱり美男子二人ってのは絵になるねえ」

後片付けを済ませた母さんが、アイスクリームをなめながらやってきた。


「それもそうか。私の好きな二人が並んでいるのだもんね。」

お母さんは育生を子ども扱いしないし、謙遜したり比べたりしません


そんなお母さんの愛情をたっぷり受けている育生だからこそ、お母さんの好きな人の朝ちゃんのこともすぐに大好きになっていきます。


お母さんの「育生が大好きだよ。」「世界一だよ」と日常会話の中で口にするところは本当に素敵です。


親子を繋ぐもの、学校、何が大切か?


この本では血縁関係のない親子、再婚、登校拒否児など身近にあってもおかしくないけれど、どこか触れづらい繊細なテーマが盛り込まれています。

しかし瀬尾まいこさんはそんなテーマですら愛おしく書いています。



「学校」に対して、登校拒否児の池内君と真面目な育生は対照的に映ります。

育生は宿題をサボったり、ずる休みをすることに気が引けてしまうタイプで、登校拒否児の池内君が学校に来ないことを不思議がり、理解出来ずにいます。

そんな中、お母さんや池内君みんなでずる休みしようとする場面では、気が乗らない育生にお母さんがこんな風に説得します。

学校は大切だし、休んじゃいけない。でも、学校を休むことはたかが知れてる。

たいしたことないってことも、大切だってことも、そのことを破ってみないとわかんないの

お母さんが育生に放った言葉ですが、その場にいた池内君にも伝えたかったことがあったのかもしれません。



お母さんがこんなセリフを言ったのは育生のことが大好きだから、そして育生が好きな池内君の心も大切にしたいからだと思います。

この本の登場する人たちはとにかく「愛情」「好き」「優しさ」で相手を包んでいきます。


複雑な問題だって愛情で包み込めば怖くない。

そんな勇気が湧いてきます。




『卵の緒』 は愛の一冊


読んでいると心があたたかくなり、そして少し複雑なテーマであってもどこか肩の力が抜けるような幸福感を含んでいます。


文庫本では、卵の緒の他にも『7’s blood』も異母兄弟をテーマにこれもまた愛情の物語が収録されています。


目に見えない愛で真っ直ぐで相手を包む育生たちを見ていると、

大切なものってなんだっけ?、大好きなものってなんだっけ?と頭でっかりになっていたことに気が付かされました。


読み終わるとホクホク心があったかくなる一冊です。


そしてハンバーグやにんじんブレッドなど美味しいそうな料理が登場するのもこの本の魅力。

ニワトリ親子
ニワトリ親子

今日は好きな人と美味しいものを一緒に食べたい



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA